
東京国際アニメフェアと日を同じくして、別会場では第8回東京アニメアワードが執り行われていました。
会場はビックサイト内の会議棟レセポションホール。おごそかな雰囲気の中、笑いあり、感動ありの授与式となりました。
功労賞を受賞された方は以下の通り。

・別所孝治さん
故人であり、フジTVのプロデューサー。鉄腕アトム、母をたずねて三千里、まジンガーZ、あらいぐまラスカルなどを手掛け、30年以上アニメに携わり、名作を作り続けてきました。
・大野松雄さん
音響デザイナー。アトムの足音を開発された方です。「アトム以後はアニメをやってないので照れくさいが貰えるものは貰っておきたい」とシャレの利いたコメントをしてらっしゃいました。
アトムに携わったのは4年間だけのようですが、ご本人は4年間やりたいことが出来たとおっしゃっています。一人目の功労者で授与された別所さんに対し、「別所さんには大変迷惑をかけたが、彼がいなければ受賞は無かったので感謝したい」とコメントしていました。
・高井達夫さん
アトムの作曲者。日本初のアニソンを作曲された方です。「天才手塚氏の手品に騙され、帰宅の電車の中で二人で構想が出来上がったと」のコメント。
天才のそばにいると才能が何百倍になる、との発言は手塚先生の圧倒的な影響力を感じさせるものでした。
・小林七郎さん
手描き技術を高め、多様な描き方をされた美術監督。
「背景美術をやって40数年経つが、飽きないし面白い。若い世代と共有して何百作作ってきた。現代では手法が多様化しているが、自然の心を大切にして欲しい。若い人達がさらに育つことを願い、もう少し頑張って続けたい」とコメントしており、美術に対する愛、そして未来を見据えている。そんな印象を受けました。
・赤塚不二夫さん
ギャグの帝王として、多くの作品がリメイクされている漫画作家。
赤塚先生のご家族の方が代理で授与され、「父の体はなくなってしまったが、赤塚スピリットは永遠になくならない。愛してくださっている皆様にお礼を言いたい」とコメントしていました。

・藤子不二雄Aさん
現役で活動する重鎮作家。F不二雄と51年より活動を始め、55年にトキワ荘入りしました。
手塚、赤塚氏と一緒に授与されるのがうれしい。子供のころからディズニーなどが人気で好きでした。トキワ荘の同期がアニメで独立したいと言っていた。当時マンガが忙しく、週に2本、月連載を6本抱えていた。手塚氏にもアトムを手伝ってくれと頼まれ、原画をやった。原画を担当したのはいいが、トキワ荘のメンバーでは個性が強すぎて、石森アトムや、赤塚アトムなど大変だった。自分たちの立ち上げたスタジオゼロは数年前にやめてしまったが、借金もゼロで良かった(ここで会場に笑いが)。他に受賞された若い人たちも頑張っていてうれしい。」と会場に笑いと感動を届ける、魔法のような時間でした。

・八奈見乗児さん
現役のベテラン声優で、レギュラーがなかったことがほぼないほど。
「功労賞をもらって迷っている。どうして私が頂けるのか、頂いていいのか。あとて、「間違えたから返して」と言われないか心配です。これからも迷いながら頑張っていきます。(ボヤッキーの声で)ボヤッキーも頑張っていくよ~」
とユニークなコメントで会場の雰囲気も明るくなりました。

・笹川ひろしさん
手塚氏のアシスタント第一号であり、アトムの絵コンテを2本担当、タツノコプロの設立にも貢献された方です。
「八奈見さんと同様、私でいいのかと思う。他にも良い人はたくさんいるのに・・・福島出身で漫画家になりたくて手塚先生の門を叩いたところ、運よく修業させていただいた。デビュー後にアニメが流行り、マンガ雑誌が減り、これからはアニメの時代だと思いアニメ界に進んだ。苦しいが楽しい毎日でした。40年経って。こんな賞や実写化、海外版など幅広くなってきた。コンピューターにより表現の幅も広くなってきている。若いクリエーターの後押しをしていきたい」
とコメントされていました。非常に謙虚な印象でしたが、若いクリエーターには力強い挨拶だったのではないでしょうか。
・小松原一男さん
作画監督であり、故人です。同社の方が代理で受理しコメントされました。
「会社の仙台、村田氏も功労賞をもらった。小さな会社なのにとてもうれしい。70年に始めたが当初のメンバーの多くが他界してしまった。故人は、永井豪作品、松本れいじ作品、ナウシカなどに参加し、最後にはメトロポリスに関わった。病に伏せ、病室で腕が上がらない中、自分で立ち腕を下ろし作画している様を見て、アニメーションとは命をかけて行う仕事だと教わった。」
このコメントを聞いて会場は服す気持ちと共に、アニメ界の偉大な貢献者に盛大な拍手が向けられました。
功労賞の授与式の様子はこのような雰囲気の中行われ、来場したファンの方にはたまらないものだったのではないでしょうか。
東京国際アニメフェアは各社のブースを見て歩き、新作アニメや最新技術に触れることもさながら、名作を振り返ったり、その年を代表するアニメーションに賛辞を贈ることも楽しみの一つだと感じました。
最後に2008年のアニメアワードにおける、公募作品グランプリとアニメーションオブザイヤーのご紹介をします。

公募作品グランプリの受賞者は「Descendants」を制作されたドイツのアニメーター、ハイコ・ヴァン・デル・シェルムさんです。写真左が、ハイコ氏、右がパトリック氏。
「映像学校で3つの事を教わりました。安い事、早く作れる事、ハイクォリティー。この作品ではその中から2しか選べないのが残念だった。今回は全く違う姿勢で臨みました。高い理想を持ち続けること。強い意志を持つこと。個人の犠牲を喜んで払うこと。
この考えは日本ではすでに実践されていることを知り、日本での受賞を嬉しく思います。」
と緊張交じりにコメントされていたのは印象的で、若いクリエーターやこれから将来の理想を夢見る方に深く刻まれたのではないでしょうか。

アニメーションオブザイヤーを受賞したのは2008年最も話題になった劇場アニメーション作品「崖の上のポニョ」でした。
受賞にいらしていたのは鈴木敏夫さん。
「ポニョは野心的であり、挑戦的な作品です。動くものはすべて手描きし、命そのものを表現するため背景など今までと違いシンプルな世界観にしました。このような素晴らしい賞を頂けてうれしく思います。」とコメントされていました。アニメーションに命を懸ける、命を吹き込む、そんな印象を強く受け、ただの「アニメ」ではなく「アニメ作品」として未来に残す、という印象を記者は感じました。
東京国際アニメフェアは来訪者が10万人を超える大きなイベントの一つです。
残念ながらアニメアワードに来場していたのは500人に満たない人数だったのではないでしょうか。
確かに華やかな各社ブースの方が楽しくもあり、これからはじまるアニメ作品の情報を仕入れるには最も有効な手段の一つでしょう。
それらこれから始まる作品のすべてはこの功労者の上に成り立ち、すべての原点となっていることをファンならば思い起こしたいものです。
キャラクターへの愛や、グッズなどへの愛も間違ったことではないのですが、記者はこれほど素晴らしいイベントに興味を持たれていないことを寂しくも思いました。

そしてアニメーション本来の楽しみは、「見ること」に間違いはありません。
記者が思うに、さらに深く楽しむには、作品のルーツを「見ること」にも追従するのではないでしょうか。そしてこれはアニメーションに関わらずすべての「作品」と呼ばれるものにリンクすると思っています。音楽や芸術、すべてはルーツがあり、そこから派生するものではないのでしょうか。
是非、このページを閲覧している方にはこの素晴らしい賞と、偉人の業績に興味を持ち、作品への深い愛を追求していただければと思います。
最後にこの記事の原文を書かれ、初日の取材協力をいただいた、本間氏に感謝の辞を述べたいと思います。













